【ざっくり感想】『データ視覚化のデザイン』
Tableu界隈で数ヶ月前から話題になっていた『データ視覚化のデザイン』を読みました。*1
Amazonでも早速ランキング上位に入り込んでいるらしいですね。
本日拙著『データ視覚化のデザイン』が発売になりました!😇
— Yukari Nagata 永田ゆかり☘『データ視覚化のデザイン』(SBクリエイティブ) (@DataVizLabsPath) 2020年6月18日
執筆は本当にキツかったですが、毎日当たり前のように目が覚めて、執筆が出来る健康な心と体に感謝します。実績ゼロの自分に1年以上伴走しいつも支えてくれた作家のふろむださんに、いつか恩返しが出来るようにこれからも頑張ります。 pic.twitter.com/YyWPbrny6e
何が書いてあるの?
・データ視覚化をするときのノウハウが載ってる
・データ視覚化/ダッシュボード作成の極北を垣間見れる
・視覚化したデータを会社で使ってもらうための戦い方のヒントが載ってる
誰が読むといいの?
自身の業務で「データ活用」をしたい人はもちろんのこと、「社内のデータ活用文化を推進しろ!」というミッションを与えられているけどスキル以外の壁に苦しんでいる人にとって、これ以上無い1冊です。
ざっくり各章レビュー
第1章:データ視覚化「キモのキモ」
「そもそも、なんでデータ視覚化しないといけないんだっけ?」に応える章です。端的に言ってしまえば、「認知的負荷を極限まで下げて、一瞬で特徴を検出できるようにするため」だとぼくは受け取りました。*2
また、視覚化が必要な理由を説明するために、冒頭で紹介されているAnscombe's Quartetは衝撃的。今度ぼくも何かの機会で使わせていただきます。
第2章:これだけでグッとプロっぽくなるコツ
”データ視覚化のデザイン”と聞いて真っ先に想像するような、色・テキスト・レイアウトそれぞれでのベストプラクティスが紹介されています。
「テキストも立派なデータ視覚化の1つ」と位置づけていて、KPIのような現状の指標は意図的にテキストで見せるという工夫を提唱している点は、いわゆる”デザイン”の本とは違うビジネスシーンならではの視点ですよね。これめっちゃ便利。
第3章:目的に応じたチャートの選択
量を見せたいとき、割合を見せたいとき、時間推移を見せたいとき、分布を見せたいとき etc…と、伝えたいポイントに対応したチャートを選ぶときのアンチョコに使える章です。
紹介されている事例はどれも非常にカッコ良すぎるので、身の丈にあったレベルに落とし込んで真似していきましょう。
第4章:事例で学ぶ -ダッシュボード作成過程 思考キャプション-
著者がこれまで作成されてきたダッシュボードを実際に載せつつ、完成形だけを見てもなかなか気づけない「作るときにどこを工夫しているのか?」を言語化していただいている、まさに著者の本領発揮な章。
読者はみんなこの域に達したいなあーと思いつつも、実際に取り組もうとすると、本章の事例と自身のあれこれとのギャップに心折れる、というのを何度も経験することになるのでしょう。*3
第5章:本当に組織に根付かせるために
「自信作だったのに偉い人に刺さらなかった」「折角作ったのに、みんなに見てもらえなくてショック」といった事態に立ち向かうための章です。自分だけじゃなく、会社全体がデータ活用できる風土を目指すためにいかに立ち向かうかのヒントが記載されています。個人的には、ココが他の”データ視覚化のデザイン”の本では踏み込めていない、最大のウリだと思っています。*4
似たような本と比較してみる
『ノンデザイナーズ・デザインブック』より、人を動かす場面を想定している
- 作者:Robin Williams
- 発売日: 2016/09/20
- メディア: Kindle版
『ノンデザイナーズ・デザインブック』には、わかりやすいデザインを実現するための基本的な考え方が網羅されています。その内容は、プレゼンテーションでもポスターでも何にでも応用することができます。
一方の『データ視覚化のデザイン』は、何のためにわかりやすいデザインをしなければならないのか?(その結果、何をしたいのか?)という、前後の文脈をより大切にしていると思っています。
『Google流資料作成術』より、データ分析”文化”を変えようとしている
- 作者:コール・ヌッスバウマー・ナフリック
- 発売日: 2017/02/16
- メディア: 単行
『Google流資料作成術』は、自分がデータでストーリーを語って人々を動かす立場になったときのpointが詰まった本だと思っています。*5
一方の『データ視覚化のデザイン』の5章では、作ったビジュアライズが組織でいかに使われ続けるかという点に焦点が当たっています。データを見る立場による着眼点の違いや、リリース後のフィードバック時のポイントなど、まさにデータ分析”文化”をつくっていくためのアドバイスが豊富に詰まっていました。
気をつけたほうがいいところ
「データ視覚化ツールの使い方」の本ではないので、「データ視覚化ハンズオン」みたいなテンションで読むとちょっと違うのかも。
また、ビジネスシーンを強く想定しているので、学生さんにはあんまり実感が湧かないところも多そう。ある意味でR指定。
第3章で紹介されてたチャートは、だいたいこちらの本に作り方載ってたんで併せてどうぞ。
おわりに
本書の内容はTableau界隈ならみんな大好きKTchannelと相補的な関係にあるので、みんなKTchannelも見ましょう。
DATA Saber Boot Camp Week2 "Visual Best Practice: Art and Science of Visual Analytics"
著者の永田ゆかりさんが運営されているData Vis Labも必読ですね☆
*1:Data saberの最終試験前にギリギリ間に合ってよかったです…!
*2:認知的負荷が高い状況で幸せになるのは、Journal of VisionかVision Researchに論文を載せる研究者(過去のぼくも含む)だけです。
*3:あとがきにも「心折れるかもけど猛烈に頑張ってね(はあと」的なことが書いてありますね。
*4:先日、会社で役員向けにBIツール活用状況に関するプレゼンをしたんですが、データ活用文化の醸成についての「費用対効果」が宿題として出されて、現在進行系で困っているところです。
*5:原題の”Storytelling with data”のエモさをここまで台無しにした邦訳タイトルはひどいと思うんですよね…