読んだ本(2021年1〜3月)
2021年1〜3月に読んだ本です。
2度めの緊急事態宣言こそ出ましたが、1度目のときと比べて自由に使える時間は増えませんでした。
最近はアジャイル開発/BizDevあたりが関心事。ずっとやらなきゃと思ってる統計(特に数理)まわりのお勉強をとことんサボってますね…
- ブランディングの科学
- 実践 顧客起点マーケティング
- ロボジョ!杉本麻衣のパテント・ウォーズ
- それってパクリじゃないですか?
- 就業規則に書いてあります!
- マンガでわかる「正規表現」
- 新規事業の実践論
- 科学とはなにか
- ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか
- ここはウォーターフォール市、アジャイル町
- 発達障害
- カイゼンシャーニー
- チームジャーニー
- デジノグラフィ
- 機械学習入門
ブランディングの科学
下記の記事に感化されて、何度目かわからない読み返し。
個人的には、初めて読んだときには1〜7章の事例を楽しく読んだんですが、最近になって読むと8章以降(特に12章)が面白いんですよね。
前半の事例をいくつか積み重なった上で「実はコレってね…」という語り口な本になっていて、「マーケティングの法則11」なるものも1〜7章さえ読めば基本的には理解できちゃうんですが、8章や12章で登場する「独自性」「フィジカルアベイラビリティ/メンタルアベイラビリティ」という武器を手にした上でもう一回読み返すと、タイトルの「マーケティングの法則11」よりも遥かに重要な哲学が根底にあったんだなあ、って思えるようになりました。
実践 顧客起点マーケティング
当時スマートニュースでマーケティングを担当されていた元P&G西口さんによる本。「顧客ピラミッド」「9セグマップ」というシンプルかつ使い勝手がいいフレームワークと、そこから各セグメントのn=1に着目して事業成長のためのインサイトを見つけるための"N1分析"という考え方が提唱されています。
顧客ピラミッド(5セグマップ)については、過去に下記記事でも少しだけ触れました。
最近おしごとでインタビュー調査をする機会があったのですが、 対象者が自社商品・サービスの利用者なのか非利用者なのか、過去経験はあるのか、認知はあるのか、はたまた競合商品に対してはどうかという点を位置づけることでインタビューの見通しが良くなっったので、本書のn1分析の質問項目はよくできているなあと痛感した次第です。
ちなみにぼくもN1 には違和感があります。
ロボジョ!杉本麻衣のパテント・ウォーズ
お仕事で特許情報調査を少しだけお手伝いしたものの、公開された特許情報の日本語が意味不明すぎて読むのに苦労したときに、「特許」「知財」とかでネットサーフィンしたときに見つけた本。弁理士の方が書いた小説風の知財解説です。*1
知財の重要性や基本ワードをさらっと触れることはできたけど、特許情報を読むのには一切参考にならなかったのと、小説としては展開が強引すぎるきらいはあったかも。
結論、これは理系青春小説でした。
それってパクリじゃないですか?
上述の『ロボジョ!』が不完全燃焼だったので、性懲りもなく参考文献で紹介されてた似たような系統の本に手を出してしまいました。こちらは弁理士ではなく小説家さんが書いたお仕事系小説。
読み物としては断然こっちのほうが面白かったです。知財を小説にすると、競合他社への情報流出→先に特許出される問題を取り扱うのが鉄板なんですかね。ともあれ情報流出って怖いなって思いました。ドラマ化されたら多分見ると思います。NHKあたりに期待します。
就業規則に書いてあります!
『それってパクリじゃないですか?』の購入時のおすすめ欄に出てきたので、思わず一緒に買ってしまった本。下記の『わたし、定時で帰ります。』が個人的には結構面白かったため、本書にも似たような期待があったりしました。*2
さて、本書は「人事労務担当がブラック企業を浄化していく物語」であれば多分期待通りに楽しかったんですが、本書の場合はそこに「アニメ業界」というエッセンスが入ってしまってるせいで、良くも悪くもそう単純な物語では無くなっています。いわゆる一般的な会社ではない特殊な業界なこともあり、登場人物たちの「仕事にかける熱意」が強すぎ、個人的には期待していたほどハマらなかったです。業界だけ変えてもう1本書いてほしいです。
マンガでわかる「正規表現」
正規表現って慣れるといろんな事できて便利ですけど、普通にパソコン使ってるだけだと出会わない/漠然と苦手意識を持つ人も多いよなあ、と。かくいうぼくも「正規表現を使うと楽になる」ってことに気がつくまでに割と時間がかかりました。
ということで「正規表現」という軸でちょっとイチから整理したいなって思ったんですが、正規表現の初歩っていろんなプログラミング本とかの項目の1つとして登場していて、「正規表現」という切り口だと結構ちゃんとした技術書がでてきちゃう印象です。個人的には『SQL 第2版 ゼロからはじめるデータベース操作」』くらいの立ち位置の正規表現本ないかなーと探してたら、ちょうど入門寄りの正規表現本が出版されてるのをみつけました。
内容としては、簡単なものから徐々にステップアップしながらストーリー形式で正規表現の実例を紹介してくださってます。URLのドメイン抽出くらいが到達点。「正規表現苦手なのでできれば避けたいです」って言ってた職場の先輩とかにちょうどいい難易度かも。まあ、「正規表現って便利だ!」という発想を持ててる人にはネットに転がってる正規表現の記事で十分だったかもしれないです。
新規事業の実践論
新規事業開発をサポートしている専門コンサルの方による、日本的な大企業で「新規事業開発をやれ」って言われたけど何したら良いか全然わかんない人のための「こんなことを、こんな順番でやっていったらええねんで」を書いてある本です。
最近、事業開発/Business Development/BizDevなるものはお仕事のポジションの一つとして、肩書として名乗る人も、それなりの数の求人もあるという事実にびっくりしています。
詳細は下記の記事でレビューしています。
「仮説構築ー検証のサイクルを顧客に300回繰り返せ」という本書が主張する”勝ちパターン”は、その後、おしごとの”新規事業開発”のときの話のタネとして使っているんですが、だいたい他の方からは苦笑いされて終わります。
科学とはなにか
「科学」をテーマに繰り広げられるエッセイ集みたいな本。
科学哲学/科学史/科学技術社会論の考え方を1冊でさらっとなぞりつつ、”生態系”としての科学の営みをいろんな角度から描画しようと試みています。
ブルーバックスのHPで掲載されていた下記のエッセイをいつも楽しみにしていたので、本書も発売前から期待しかありませんでしたが、見事のその期待通りだったなあと思っています。
ということで、お題エッセイのもう1名の執筆者である水越伸さんのメディア論も、講談社現代新書あたりからの出版お待ちしてます。
ちなみにAmazonレビューに書かれていた
「科学とはなにか」、「新しい科学論」、「いま必要な三つの視点」はどちらかと言うと並列の関係であって、それぞれが順に本書で登場する。
って話はほんとにそのとおりだなって思いました。
ワークマンは商品を変えずに売り方を変えただけでなぜ2倍売れたのか
データサイエンス系の方のブログで紹介されていたので手にとった本。ワークマンの土屋哲雄専務を主人公に、かれがどうワークマンの文化を変えて / 変えずに事業成長を成し遂げたのかのドキュメンタリー本。
第2章で紹介されているExcelを前提としたデータ活用文化の浸透施策は確かに一つの理想を徹底してるなと思いました。ぼくはこの点にTableauその他BIツールの可能性をちょっぴり感じているんですが、いずれにしても「誰もが共通して使えるデータ分析環境」は強いですよね。店舗を舞台にしたリアルABテストをやりきってるのも素晴らしすぎる。
個人的に「すげえ…」って思ったのは、本書のことをネットでググってたら「私も登場しています」というブログがいっぱい出てきたことです。本書ではワークマンがネットでコアな人気を含むインフルエンサーを積極的にアンバサダーとしてお抱えしている事例が紹介されていたんですが、まさにそのパワーか、と。。。
ここはウォーターフォール市、アジャイル町
メテオフォール型開発 - 実践ゲーム製作メモ帳2 https://t.co/0aeofGgMg2
— にゃん (@meow3571) 2021年3月7日
2年前は他人事と思って笑いながら読んでたけど、今読んだらわかりみがすぎた
2年前はデータ分析プロジェクトをマネジメントする立場だったので半分他人事でしたが、今はシステム開発プロジェクトのマネジメントに携わっているので、「ウォーターフォール」なるものに昔より馴染みが出てきました。正直、よりよいサービスを作るうえではウォーターフォール的な進め方をされているパートナーさんとはやりにくいんですが、一方で発注するにあたっては、トラディショナルカンパニーの内部での社内交渉や予算獲りが圧倒的にやりやすいなあとも。
ということで、「ウォーターフォール的なものと共存できそうなアジャイル」というキャッチコピーにに興味を持って手にとった1冊です。いわゆる「アジャイル本」には、従来のウォーターフォールの話を全然していないのもなあ、というのも本書に惹かれた理由。
読んだ感想としては、アジャイルはソフトウェア開発手法と言うより。ふつうにチームビルディング、ないしはチームで仕事をすすめるための技術なんだなってことでした。ぼくのお仕事のやり方とは異様に相性が良さそうだなって思いました。
にゃんがその昔無意識でやってたこと、アジャイルのプラクティスで名前ついてた
— にゃん (@meow3571) 2021年3月2日
ちなみに2番めに出てきた感想は「slackとbacklogのまわしものかよ」でした。
発達障害
もしかして自分はADHDじゃないか疑惑があって通院を始めた際、精神科の方から「まずはお勉強しましょう」と勧められた1冊。
「ADHD / ASDは、0 or 1で症状が出るものではなく、グラデーションがある」「ADHD / ASDの症状は併発しうるからこそ、切り分けての診断が難しい」あたりがメインメッセージで、診断が出る / 出ないと、実際の生活に支障が出る / 出ないは、また別の話なんだろうなあというのを感じた次第です。
カイゼンシャーニー
先に載せた『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』でアジャイル開発に興味を持ったので、勢いでアジャイル関連本を数冊買ってみた中の1冊。先程の『アジャイル町』の著者の1名による本。
ソフトウェア開発チームがアジャイル開発を取り入れていくストーリーと、その場で取り入れられていたアジャイルのプラクティス解説を交互に挟んでいく構成で描かれています。アジャイル本
『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』を読んだ際にも思ったのですが、アジャイル開発は独特な用語・体系による独立した世界観ではなく、あくまでプラクティスであって、目的達成のために手法や哲学を良いところだけつまみ食いするのもアリなんだなってことに気が付きました。「アジャイル開発をする」ことは決して目的ではないですよね。
本記事で言及したアジャイル本では一番面白かったし、参考になっています。
チームジャーニー
先ほどの『カイゼン・ジャーニー』の続編に当たる本です。
こちらは前著よりも”ジャーニー”の側に重きを置かれていて、ジャーニーによる方向性づけで、いかにチーム運営をうまく前に進めていくかの話がメインです。何にプライオリティを置くか、その実現のためにチームでどうやって同じ方向を向くのか
やはりこの本でもアジャイル / ウォーターフォールという開発手法はあくまで手段でしかなく、プロダクトをつくるためにいかにチームや組織を運営していくかのほうが重要であることが幾度となく言及されており、完全な「アジャイル開発」であることにこだわる方々に対して「だからどうした」といえる哲学を持っていることが大切なんだなと再認識できました。
デジノグラフィ
- 作者:博報堂生活総合研究所,堀 宏史,酒井 崇匡,佐藤 るみこ
- 発売日: 2021/03/04
- メディア: Kindle版
博報堂生活総研さんによる「ビッグデータでエスノグラフィ」の取り組みをまとめた1冊。
特定の1人から取得した履歴データを時系列順に読み込んでペルソナを描くという取り組みの片棒を担いだことがあるので、天下の博報堂さんはどんな切り口でやっているんだろうなあという点が気になって手に取りました。
感想としては、不満買取センターさんの持ってる、定性的にも定量的にも扱えるユニークなデータ群は面白いなあがいちばん。読み取る切り口よりも、データソースのユニークさで力押ししている感覚はちょっとあったかも。データ量が多くなったから細かく切りやすくなったのは完全同意。
生活総研さんの取り組みは学生時代から大ファンで、「生活定点」のページは暇つぶしの一つです。マーケティングリサーチという業界を選んだきっかけのひとつに、生活総研のような活動をしてお金をもらってる業界だと勘違いしたからというのもあります。
機械学習入門
ITエンジニア本大賞2021が発表された際に、過去の受賞作も気になって調べていたら行き着いた本。
白雪姫の「カガミよ、カガミよ、カガミさん…」のテンションのまま機械学習入門をやりきる、なかなかすごい本だなあと。本当に数式を極力使わずに「マンガでわかる」テンションを完遂しているんですが、その説明内容の広さ・深さには「マンガでわかる」で感じちゃうような物足りなさが一切なかったです。
1回で咀嚼しきれた気がしないので、ニューラルネットワークの部分は後でもう一回読みたい。